ジェロントロジーに関する耳寄りな情報 第9回(ジェロ・マガ Vol.9 [2021年7月7日]より一部抜粋)

このコーナーでは、ジェロントロジーに関連する、日々の生活や今後の生き方に役に立つ、あるいは「耳寄りな」情報をお届けいたします。
今回は前回に引き続き、6月11日に公表された「高齢社会白書」(令和3年版)の中から注目ポイントをご紹介したいと思います。

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今回ご紹介するのは「学習・社会参加」に関する調査結果です。

ここでは、60~69歳で81.4%、70歳以上で62.6%の人が今後学習したい、という結果調査が紹介されています(p42)。
なぜこの結果に着目したかといいますと、ジェロントロジー推進機構設立前に2年間の研究を行った「ジェロントロジー研究協議会」において、
同様の調査を実施したことがあるからです。

ジェロントロジー研究協議会では2019年5月、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の国道16号線沿い地域(26市町)に
居住している高齢者(70歳代男性)300人を対象に、Webアンケート調査を実施しました。
アンケートでは、日々の生活においてやりがいのある活動をしているか等の現状とともに、
今後の学ぶ意欲や社会的課題を解決するための事業への参画意向について質問しました。

なぜ、国道16号線沿い地域居住の男性高齢者に対してこのような調査を実施したかといいますと、
弊所会長の寺島実郎が『ジェロントロジー宣言』で述べている通り、日本の20世紀における高度成長モデル(工業生産力モデル)を支えた象徴的存在が
国道16号線沿いのニュータウン等に住む東京都心通勤層(多くは男性)である一方で、
21世紀になってこの層に高齢化社会の課題(役割喪失による社会や家庭内での孤立、引きこもり・クレーマー化等)が
顕在化してきていると考えたからです。

その世代が定年退職を迎えていくことになりますが、国道16号線沿い居住者は高学歴の方も多いことから、
我々としては健康である限り、今後新たな学びを行ったり、「カセギ」から「ツトメ」といった社会に貢献するため活動参画して頂きたく、
そのポテンシャルは大いにあると考え、意欲がどのぐらいあるのかを把握するためにこのアンケート調査を実施しました。
アンケート調査結果の一部は、以下のジェロントロジー研究協議会パンフレットのp6でご覧になれます。
【パンフレット】

ここでは、回答者のうちの77%の人が今後学ぶ意欲がある、という結果となりました。
「高齢社会白書」で紹介されている調査の対象は全国であり、また男女両方の回答が含まれていることから単純には比較できませんが、
国道16号線沿い居住の高齢者の方が学ぶ意欲が高いことが示唆されます。

また、「高齢社会白書」では今後だけでなく、現在の学習活動についても掲載されており(p41)、60~69歳の55.0%、70歳以上の42.5%が、
この1年間に学習をしたことがある、という結果となっています。
また、学習の形式は、60代は「インターネット」、70歳以上は「公民館や生涯学習センターなど公的な機関における講座や教室」が
最も多いという結果となっています。

ただし、これらの「高齢社会白書」の結果は内閣府が平成30年に実施した「生涯学習に関する世論調査」からの引用であり、
コロナ禍前の状況を表しているものです。
数年後同様の調査があるかと思いますが、コロナ禍によって学習の形式がどのように変化したのか、
70歳以上であっても(ジェロントロジー総合講座のように)インターネットで学ぶことが主流となっているのか、が注目されます。

【「高齢社会白書」の全体版はこちら】