ジェロントロジーに関する耳寄りな情報 第5回(ジェロ・マガ Vol.5 [2021年5月12日]より一部抜粋) このコーナーでは、ジェロントロジーに関連する、日々の生活や今後の生き方に役に立つ、あるいは「耳寄りな」情報をお届けいたします。 今回は、現在私たちの生活に大きな影響を与えている新型コロナウイルスに関する話題です。 —-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—- —-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—- 3回目の「緊急事態宣言」は5月末まで延長されることとなり、さらに本日からは福岡県と愛知県を加えた6都府県に拡大するなど、 感染状況は依然として厳しい状況が続いています。 悲しいことに、新型コロナ禍でこれまで以上に「死」という言葉が多く聞かれるようになってしまいました。 正直なところ、「死」や「最期のお別れ」というのは想像したいものではありませんが、 現実の問題として、新型コロナによってこれまでどおりのお別れができないことが課題となっています。 先月5日に、弊所特別研究参与の秋冨慎司医師が登壇したオンラインセミナー「~新型コロナウイルス感染症拡大から1年~ ご遺体への対応と『最期のお別れ』を考える。」が開催されましたので、その参加レポートをお届けします。 セミナーでは、株式会社ジーエスアイの橋爪謙一郎氏、千葉大学大学院医学研究院法医学教室の斉藤久子先生、 そして弊所研究参与も務める日本医師会総合政策研究機構の秋冨慎司氏が登壇され、 新型コロナ禍での「お別れのあり方」についてお話を伺いました。 新型コロナウイルス感染症によって亡くなられた方のご遺族は、故人とこれまで通りの最期のお別れができない状況があり、 日本医師会総合政策研究機構では、対新型コロナウイルス特別医療タスクフォースを設置して、 「新型コロナウイルス感染症により亡くなられた方及びその疑いがある方の処置、搬送、葬儀、火葬等に関するガイドライン」を策定し、 厚生労働省・経済産業省のガイドラインに引き継いでいます。 【参考URL】 上記ガイドラインに従った感染対策を十分に行えば、故人とのお別れの時間を持つことが可能になります。 しかし、上記のガイドラインは2020年7月に公表されたものの、 現場への情報提供が十分に進んでいないという課題もあると秋冨医師は述べられました。 報道を見ると、今なおコロナ感染者とのお別れができていない状況が続いている模様です。 【関連記事URL】 また、橋爪氏は、適切な対処をすればお別れをもつことが可能であるにも関わらず、 「新型コロナだから」という理由でお別れができなくなってしまうことは、 病気による差別に近いのではないかと感じていると述べられ、新型コロナの流行中においては、感染の有無に関わらず、 感染対策をしたお別れをスタンダードとしていく必要があると述べられていました。 さらに、セミナーに参加した事業者からは「ガイドラインを守らない自治体もある」という声も聞かれ、 橋爪氏は事業者・現場の声を伝えていく手伝いをしたいと述べられました。 秋冨医師も、厚労省・経産省に引き継いだガイドラインのアップデートや事業者への情報提供が重要であるとおっしゃっていました。 セミナーに参加して、人生の最期の場面の尊厳を守ることの重要さを改めて考えさせられました。 命を救うことは最優先で重要なことではありますが、 ジェロントロジーにおいて重要となる「高齢期のウェルビーイング」を考えるにあたって、 本人や周囲が望む人生の最期を持てるようにすることもとても大切なことではないでしょうか。 「新型コロナウイルス感染症だから」という理由で、その尊厳が損なわれることのないようにしていく必要があると思います。 お別れの場面についても、科学的な根拠に基づいたガイドラインのアップデートと現場への情報提供やサポートが進んでいくことを期待したいと思います。