ジェロントロジーに関する耳寄りな情報 第7回(ジェロ・マガ Vol.7 [2021年6月9日]より一部抜粋) このコーナーでは、ジェロントロジーに関連する、日々の生活や今後の生き方に役に立つ、あるいは「耳寄りな」情報をお届けいたします。 今回は、「観光」に焦点を当てたいと思います。 —-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—- —-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—- 日本総合研究所では、2018年より「ジェロントロジー研究」に取り組み始め、 「観光」はその大きな柱の一つと考えておりました。 弊所会長寺島著書『新・観光立国論』(2015)においては、主にインバウンドを日本の成長戦略の一つと捉え、「新時代の観光立国論」を提言しています。日本ならではの「おもてなし」の心や宗教的寛容さ、清潔で安全という魅力を商品価値に結び付けることにより、「観光」というサービス産業の付加価値を高め、地方創生の切り札として掲げております。 政府は「明日の日本を支える観光ビジョン」(2016年3月30日策定)を掲げ、訪日外国人の旅行者数及び旅行消費額の大幅な増加(2030年に訪日外国人旅行者数6,000万人、観光収入15兆円)を目指し、様々な施策を進めた結果、2019年には3,188万人と順調に伸びてきていました。 しかし、2020年からの新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、外国人の入国制限措置等により日本を訪れる外国人はほぼ0となってしまい、観光業は大きな打撃をうけることとなりました。2021年4月の訪日外国人数(推計値)は1万900人であり(日本政府観光局(JNTO)発表)、昨年より改善しつつあるものの、パンデミック前(2019年)と比較し99.6%減。まだまだ回復の兆しは見えない状況です。 ただ、海外に目を向けると、欧州連合(EU)では6月3日、観光など不要不急の渡航を認める国・地域のリストに日本を加えたと発表されました。隔離措置なしにEUへの渡航を認める同リストには既にオーストラリアやイスラエル、ニュージーランド、ルワンダ、シンガポール、韓国、タイが入り、欧州においては、ゆっくりと旅行再開に向けて動きつつあるのも事実です。 この春、アメリカン・エキスプレスから発表された意識調査(2021年1月に日本を含む7か国で実施)をみると、旅行の再開を待ち望む強い期待が見受けられる一方で、新型コロナウイルスの感染拡大が始まって1年以上が経過した今、旅行に対する概念が大きく変わってきています。これからのラグジュアリートラベルに求められる要素として、「自分に合わせてカスタマイズされた体験」が一位ですが、「厳しい基準での衛生管理」も半数の人が重要としています。また、「密ナシ」を求める消費者の動向として、感染リスクの回避から、旅行先を選ぶポイントは、従来人気であった比較的人口が多い大都市ではなく、今まであまり旅行先として思い浮かぶ場所ではなかった「セカンドシティー」が人気になってきている傾向にあります。 また、観光に関連する新しいトレンドとしてよく聞かれるキーワードに、「アドベンチャーツーリズム」と「ワーケーション」があります。 アドベンチャーツーリズム(AT)とは、「アクティビティ」、「自然」、「異文化体験」の3つの要素のうち2つ以上で構成される旅行形態と定義されています(Adventure Travel Trade Association)。ATの考え方の中で重要なポイントは、地域の企業や地域住民に、経済・社会的な観点でのサステナブルな効果を残すと同時に、その効果が地域の自然や文化を保護・活性化することに貢献していることといわれています。また、アドベンチャーツーリズムを好む旅行者は、 教育水準の高い富裕層が多いといわれ、「量」より「質」を目指す近年の我が国の観光業界において、注目される旅行形態です。 観光だけには限りませんが「ワーケーション」も注目されています。働き方改革の影響もあり、また、コロナ禍によるテレワークの普及で、様々な自治体がワーケーションの誘致に力を入れてきています。地域振興サポートや地方創生活動を行っている藤川遼介氏((株)エピテック代表取締役)の話では、様々な自治体と携わる関係からこのワーケーションの傾向を見ると、「遊びと仕事をうまく両立させる理想論的なワーケーションというのは難しい。まずその地域に仕事の場所を移し仕事に専念しつつ、地域との交流を図り(遊びの要素を体験)、その交流から新しいビジネスを創出し雇用を生み出していくようなステップを踏んで進めると効果がある」とのお考えでした(那須塩原市の紹介動画)。 コロナ前、インバウンドの急増によりオーバーツーリズムなどの弊害もみられていました。「サステナブルな観光」という考え方は、コロナ後に再生される観光にさらに重要と考えられます。大きくトレンドが変化する今だからこそ、自分たちの地域に新たな魅力を発見し、地域が持つ宝を将来に引き継ぐ持続可能な地域づくりが求められるのではないでしょうか。