ジェロントロジーに関する耳寄りな情報 第122回(ジェロ・マガ Vol.122[2026年1月27日]より一部抜粋)
このコーナーでは、ジェロントロジーに関連する、日々の生活や今後の生き方に役に立つ、あるいは「耳寄りな」情報をお届けいたします。
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お正月はついつい食べ過ぎてしまう時期ですが、日本では古くから、1月7日に七草粥を食し、お正月のご馳走で 疲れた胃腸を労わる風習があります。自然の摂理に合わせ、身体を「休ませる」ことの大切さを、 先人たちは知っていたのだと改めて感じます。
さて、海を越えた英国や欧米諸国でも、この時期に身体を労わる新しい習慣が定着しつつあるのをご存じでしょうか。それは「ドライジャニュアリー(Dry January)」と呼ばれる、1月にお酒を控える取り組みです。
ドライジャニュアリーは、2013年に英国の慈善団体(Alcohol Change UK)が提唱したキャンペーンです。その趣旨は、クリスマスや年末年始の祝宴が続く12月を終えたあと、1月の1ヶ月間はお酒を断ち、アルコールとの付き合い方を見直そうというものです。1ヶ月という期間を区切り、身体をリセットすることで、自分自身の健康状態や睡眠の質を改善し、そしてお酒以外の時間の楽しみに改めて目を向けてみよう、というチャレンジです。
Alcohol Change UKの発表では、2026年1月から1か月間禁酒する予定の人が1,750万人と、イギリスの成人の1/3に上る人が1ヶ月の禁酒を計画していると推計され、保健大臣がキャンペーンを公に支持しているとされています。さらに、現在ではフランスやスイス、アメリカなど欧米を中心に世界中で広まっています。1ヶ月の禁酒は体には良さそうだと感じますが、一方で、感覚的には我慢した反動で、かえって飲みすぎてしまうのではとも感じます。この疑問に対しては、イギリスのサセックス大学が発表した大規模な追跡研究(※1)が参考になります。
※1 de Visser, R. O., Robinson, E., & Bond, R. (2016). Voluntary temporary abstinence from alcohol during “Dry January” and subsequent alcohol use.
Health Psychology, 35(3), 281-289.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26690637/
同研究によれば、下記のことがわかりました。
・このチャレンジを完遂できた人は、6ヶ月後も飲酒量が最も大きく減少しており、「お酒を断る自信」も最高レベルで維持され、リバウンドリスクも最も低い。
・一方、途中で失敗した人も、挑戦前と比べて飲酒量と酩酊回数が減少し、お酒を断るスキルが確実に向上した。
・失敗した場合でも、飲酒量が増えた人は17.3%と低く、
リバウンドリスクは低い。
したがって、ドライジャニュアリーは「たとえチャレンジに失敗しても、効果は残る」と言えるようです。さらに、残念ながら1ヶ月間の禁酒を完遂できなかった人々も、その後の半年間にわたって飲酒量が有意に減少したと報告されています。これは、「1ヶ月身体を休ませてみよう」と決意し、実行したその姿勢自体が、自身の飲酒行動に対する「コントロール感」を高め、 長期的な習慣改善につながることを示唆していると考えられているようです。「1ヶ月は続けられないかもしれない」と不安がある場合にも、まずはチャレンジしてみることが重要だと言えそうです。
また近年、欧米の若者を中心に「ソバーキュリアス(Sober Curious)」というライフスタイルも注目されています。Sober(しらふ)とCurious(好奇心)を組み合わせた造語で、「お酒は飲めるけれど、あえて飲まないことを楽しむ」という考え方です。お酒がない時間を、読書や趣味、あるいは深い対話の時間に充てる、または近年進化しているノンアルコールドリンクなどを味わうものです。
いきなり完全な禁酒が難しい場合は、「ダンプ・ジャニュアリー(Damp January)」=「少し湿った1月」として、酒量を減らすことから始めるスタイルもあるようです。もうすぐ1月も終わろうとしていますが、この機会にお酒との付き合い方を考えるのもよいかもしれませんね。
