ジェロントロジーに関する耳寄りな情報 第8回(ジェロ・マガ Vol.8 [2021年6月23日]より一部抜粋)
このコーナーでは、ジェロントロジーに関連する、日々の生活や今後の生き方に役に立つ、あるいは「耳寄りな」情報をお届けいたします。
今回からは、6月11日に公表された「高齢社会白書」(令和3年版)の中から注目ポイントを数回に分けて紹介していきたいと思います。
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私が特に注目したのは「近所の人とのつきあい方」という調査結果です。
日本、アメリカ、ドイツ、スウェーデン各国の60歳以上の人に、「ふだん近所の人とは、どのような付き合いをしているか」を尋ねた調査です。
日本とスウェーデンは「外でちょっと立ち話をする程度」(日本64.7%、スウェーデン88.5%)、
アメリカは「相談ごとがあったとき、相談したり、相談されたりする」(42.1%)、ドイツは「お茶や食事を一緒にする」(46.3%)
の回答割合が最も高い結果となりました。
また、「病気の時に助け合う」と答えた割合が一番高かったのがアメリカ(38.9%)であり、日本は5.0%でした。
この調査において、回答者が選べる選択肢は下記の通りです。
「お茶や食事を一緒にする」、「趣味をともにする」、「相談ごとがあった時、相談したり、相談されたりする」、
「家事やちょっとした用事をしたり、してもらったりする」、「病気の時に助け合う」、「物をあげたりもらったりする」、
「外でちょっと立ち話をする程度」、「その他」
2019年度に、ジェロントロジー研究の一環で埼玉県上尾市にて高齢者を対象としたヒアリング調査を行いました。
その際に得られた結果と併せて考えてみますと、そもそも「近所の方とのつきあいがなぜ必要か」、という問いが重要かと思います。
世帯構造、その地域に住むようになったきっかけ、就いている仕事等々によって、大きく変わります。
上尾市の調査では、生まれたときからずっと上尾市民の方と、就職を機に上京をして、住まいがたまたま上尾市だったという方とでは、
当然「近所づきあい」についての反応は全く異なりました。
そこには、従来から住んでいる方と新しく入ってきた方との間の「壁」というものは必ずと言っていいほど出来るものであり、
特にマンションのような集合住宅の場合はその傾向が強まります。
積極的にはつきあいがなくとも、近所のことを少しでも気に留めておくと、ちょっとした変化(「最近あの方、見ないなあ」・・など)に気づき、
実は困りごとが起こっていて、大きなトラブルを未然に防げたという事例も上尾市調査からは見られました。
高齢社会白書の「近所の人とのつきあい方」は文字通り、どのようなつきあいをしているかの方法論は書いてあるものの、
つきあう目的や理由、そして年齢と性別以外の回答者の属性については特に示されていません。
もちろん比較的大きな調査なので、それらを含めるのは難しいことは重々承知していますが、
そのあたりの考え方については、少し深掘りした調査も必要ではないかと、上尾市での調査を実施して感じます。
私としては、たとえ「外でちょっと立ち話をする程度」であったとしても、
その頻度が多ければ、近所同士のつながりはある程度あるとも考えられます。
私はマンション住まいですが、先ほどの選択肢で選ぶとしたら、「外でちょっと立ち話をする程度」となります。
私は、住民に限らず、出入りする業者や宅配便の業者も含め、積極的に挨拶をすることを心掛けています。
近所づきあいの目的として、防犯・防災意識を共有することにあります。
小学校3年生の子どもが居りますが、そうすることで、万一学校の行き帰りで、
何かあったときに、きっと近所のネットワークがセーフティネットとして、働くと思います。
「近所のお付き合い」には様々なメリット・デメリットがつきまとうものです。
コロナ禍の状況下でもありますので、積極的にお付き合いすることもなかなか難しい状況です。「向こう三軒両隣」という言葉がありますが、
少なくともいざという時のために、「外でちょっと立ち話をする程度」であっても、つながりを作っておく方が良いのではないかと思っております。
ぜひ一度「ご近所づきあい」につきまして、考えてみてはいかがでしょうか。