ジェロントロジーに関する耳寄りな情報 第25回(ジェロ・マガ Vol.25 [2022年2月24日]より一部抜粋)

このコーナーでは、ジェロントロジーに関連する、日々の生活や今後の生き方に役に立つ、あるいは「耳寄りな」情報をお届けいたします。

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今回は、政府が行っている「国土強靱化」の取組を取り上げたいと思います。
国土強靱化とは、「大規模自然災害時に、人命を守り、経済社会への被害を防ぎ、迅速に回復するための国土・経済社会システムを構築していくこと」です。

我が国は、地震、豪雨、火山噴火、豪雪などの様々な自然災害が発生し、被害も激甚化してきています。
特に2011年に発生した東日本大震災により、防災・減災が喫緊の課題であることが明らかとなりました。
2012年の衆議院総選挙で自民党が公約に国土強靱化を掲げ、第2次安倍政権下の2013年に、「国土強靭化基本法」が施行されました。

この法律を基に「国土強靱化基本計画」が策定されましたが、2018年に7月豪雨、台風第21号、大阪北部地震、北海道胆振東部地震などの激甚災害が頻発したことから、電力や道路、空港、鉄道などの国民経済・生活を支える重要インフラを点検した上で閣議決定されたのが「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」です。

この3か年緊急対策は2018年から2020年までの3年間、約7兆円の事業規模で、防波堤整備や河道掘削、砂防ダム設置等を集中的に実施しました。
これらの対策により、期間中に発生した2019年10月の東日本台風、2020年7月の豪雨などで被害を防止・軽減できた事例が、以下の資料にまとめられています。

国土交通省「いのちとくらしを守る防災・減災、国土強靱化 3か年緊急対策・令和新時代を支える事前防災効果事例集

3か年緊急対策は既に終了していますが、現在は大規模地震等への対策やインフラの老朽化対策、それらを効率的に行うためのデジタル化の推進等をさらに進めるため、「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」が実施されているところです(5年間で約15兆円の事業規模)。

将来の災害から我々国民を守ることにつながるこのような国土強靱化の取組は、今後も長期的に実施していくべきと考えます。
ただ、大きな予算がついた3か年緊急対策が東日本大震災から7年後にようやく実施されたというのは、もう少し早くできなかったものかと、政府の動きにもどかしさも感じます。

また、アメリカのバイデン政権は昨年、約140兆円規模のインフラ投資法案を成立させました。
インフラの老朽化の問題が今後顕在化していくことが懸念される日本でも同様に、現在の国土強靱化の取組以上に長期間で大規模なインフラ整備・メンテナンス計画を策定していくことが必要だと考えられます。

ただし、その担い手である建設技能労働者の減少や高齢化という別の課題もあるため、いきなり大規模には実施できない面があります。
それに対しては、インフラのメンテナンスを「防災産業」の1つとして位置づけ、長期で政府が大規模な予算をつけることが、この分野に人材を集めることにつながるのではないかと思います。

さてここまで、ジェロントロジーとは関係のない話題のように感じられたかもしれません。
ただ、国土強靱化とは、インフラ等が災害によって被害を受けてから復旧するのでなく、未然に被害を防ぎ、災害時に国民の命や生活を守る役割を果たしてもらうための取組です。
つまり、ジェロントロジーの考え方である「支えられる側から支える側へ」の国土版である、と考えると分かりやすいのかと思います。

ますます重要性が増してくる国土強靱化の今後の取組を、ご注目頂ければと思います。