ジェロントロジーに関する耳寄りな情報 第28回(ジェロ・マガ Vol.28 [2022年4月13日]より一部抜粋)

このコーナーでは、ジェロントロジーに関連する、日々の生活や今後の生き方に役に立つ、あるいは「耳寄りな」情報をお届けいたします。

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今回は持続可能な観光と高齢化への対応について考えてみたいと思います。

皆さまは持続可能な観光(サステナブルツーリズム)をご存知でしょうか。
持続可能な観光とは、国連世界観光機関(UNWTO)によると「訪問客、業界、環境および訪問客を受け入れるコミュニティーのニーズに対応しつつ、現在および将来の経済、社会、環境への影響を十分に考慮する観光」と定義されています。
持続可能な観光の実現に向け、観光庁では2018年に「持続可能な観光推進本部」が設置され、その後「日本版持続可能な観光ガイドライン」の開発や導入モデル事業が行われています。

観光庁の下記ページをみると、「(3)先進事例の整理・周知」で、国内外の持続可能な観光の先進事例が取り上げられています。
参考:「持続可能な観光」の取組

2020年度の持続可能な観光の先進事例から、特に高齢化への対応が進んでいる2つの観光地をご紹介します。

①兵庫県神戸市・須磨海岸
兵庫県の須磨海岸では、2017年から車いす利用者とその家族が一緒に海を楽しめるユニバーサルビーチを目指して取組を進めています。
車いすで砂浜を移動するためのビーチマットを日本で初めて導入し、さらに水陸両用車いすであるヒッポキャンプも導入しています。
ビーチマットは設置や撤去に人手がかかりますが、それによって一夏に100人以上の市民ボランティアが集まるなど、「市民のみんなでユニバーサルビーチを作っていく」という風土が作られています。
そのほかにも身障者用駐車スペースや多目的トイレ、バリアフリーシャワー等も整備されており、車いすの利用の有無に関係なく一緒に楽しむことができます。

②台湾・東北角地区自転車道
台湾の東北角地区では、廃止となって20年以上放置されていた全長約2kmのトンネルを観光促進のために遊歩道、サイクリングロードとして整備する事業が進められてきました。
2013年には約20kmにわたるサイクリングロードが整備され、漁村や海岸等の景色を楽しむことができる人気観光コースになりました。
この事例集では記載されていませんが、ここもバリアフリー対応が進んでおり、水陸両用車いす、車いす対応トイレ、身障者用駐車場などが整備されています。
サイクリングやシュノーケルのバリアフリーツアーといったソフト面の取組も進んでいます。
さらに、この地域ではエコツーリズムの取組と共に漁村集落の文化の保全・継承を進めており、観光で得た収益を地域の高齢者のコミュニティーづくりに還元しています。

今回は、高齢化に対応した持続可能な観光の取組について2地域をご紹介しましたが、このような観光地、取組はまだまだ主流ではありません。
「持続可能な観光」の中でも、バリアフリー(ユニバーサル)な観光地づくりや住民(高齢者)の活躍(文化の伝承や雇用促進等)といった視点を取り入れた取組が進むことを期待しています。

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