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ジェロントロジーに関する耳寄りな情報 第55回(ジェロ・マガ Vol.55[2023年5月9日]より一部抜粋)

このコーナーでは、ジェロントロジーに関連する、日々の生活や今後の生き方に役に立つ、あるいは「耳寄りな」情報をお届けいたします。

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今回は、4月26日に公表されてニュースでも報道されました、国立社会保障・人口問題研究所による「日本の将来推計人口(令和5年推計)」(以下、「今回推計」とします)についてご紹介します。
推計結果の詳細については、以下のURLで見ることができます。

結果の概要

詳細データ等

2070年の日本の総人口が約8,700万人(外国人含む)に減少するという推計結果は、約50年後には人口が現在の約7割となってしまうということで、テレビや新聞でも大きく取り上げられました。

ただし、2017年に行われた前回の人口推計(以下、「前回推計」とします)で算出された2070年の人口は約8,500万人で、実は今回推計の方が人口減少のスピードが緩むという結果となっています。

今回推計ではコロナ禍の影響が考慮されているので、前回推計から人口が増える結果になっているのは意外と思われるかもしれません。
そこで、なぜこのような推計結果になっているのかを見てみたいと思います。
今回推計に影響している大きな要因は以下の2点です。

①出生率は前回推計よりも低下する
将来人口を推計するには、日本人の将来の出生率と死亡率に対して想定を置く必要があります。今回推計ではやはり新型コロナウイルス感染拡大期の婚姻数減少等が影響し、2021年では1.30である合計特殊出生率が2028年まで1.2台に落ち込むなど、前回推計と比べて出生率が低下する想定で推計されています。

②外国人人口が大きく増加する
一方で、コロナ期間中を除いた近年の動向を反映し、外国人の入国数が前回推計よりも大きく増加(前回推計:年間6.9万人→今回推計:年間16.4万人)する、という想定になっています。

①、②の影響を合わせた結果、2070年の推計総人口約8,700万人のうち、日本人の人口は約7,760万人(2020年:約1億2,300万人の6割強)まで減ってしまう一方、外国人の人口が約940万人(2020年:約275万人の約3.4倍)と、総人口の約1割を占めるという推計結果になっています。

つまり、前回推計から人口減少のスピードが緩和したといっても、それは外国人人口の大きく増加する想定をしているから、ということになります。

個人的には、総人口約8,700万人という数字よりも、外国人が総人口の約1割を占めるほど増えないと、その水準の人口も達成できないことに驚きました。
また、日本に居住する外国人が現在の3倍以上に増えるといっても、果たして制度が対応できるのか、社会として許容できるのかといった面で、このような日本の姿の実現に疑問を感じるところでもあります。

さらに、2070年の出生率は今よりも高い1.36を想定しており、これも高すぎる想定であるということも十分に考えられます。そうなると、約8,700万人ですら、実現は難しいかもしれません。

人口減少の弊害は、労働力人口の減少という、生産(財・サービスの供給)への悪影響が強調されることが多いように思います。しかし、生産はAIも含めた資本への代替や機械化、そしてその技術革新によって、意外とその悪影響を少なく抑えることができるかもしれません。

むしろ、人口が減ることで財・サービスへの需要が少なくなったり、需要が医療や介護等に偏ってしまい、産業構造が大きく変わってしまうことの方が大きな問題のように思います。

岸田政権が最重点政策として掲げる「異次元の少子化対策」は子育てへの支援が中心で、前述したコロナ禍による婚姻数減少への対策としての効果はあまり期待できそうにない印象です(それどころか、増税などしてしまったら逆効果です)。
予想される人口減少を少しでも緩和できるよう、的確な政策を採ってもらいたいものです。

最後に余談ですが、少し前に交流掲示板でも話題になった対話型AI、ChatGPTに、「2070年の日本の総人口の推計値を教えて下さい」と質問しても、今回の最新の推計結果どころか、実在しない調査結果を出典にした、誤った回答が返ってきました。

AIが人口減少による生産への悪影響を緩和する役割を果たすには、現時点ではまだまだ精度の改善が必要のようです。