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ジェロントロジーに関する耳寄りな情報 第58回(ジェロ・マガ Vol.58[2023年6月20日]より一部抜粋)

このコーナーでは、ジェロントロジーに関連する、日々の生活や今後の生き方に役に立つ、あるいは「耳寄りな」情報をお届けいたします。

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今回は、自然災害と地域コミュニティーについて見ていきたいと思います。

 

ご存じの通り、日本は世界有数の災害大国です。

国土技術研究センターが取りまとめたデータによると、日本の国土面積は全世界の0.29%であるにも関わらず、全世界で発生したM6以上の地震の18.5%が日本で発生しています。
(2003~2013年の統計)*1

 

さらに、全世界の災害で受けた被害金額の17.5%が、日本の被害金額となっているのです。*1
(1984~2013年の統計)

また地球温暖化の影響により、年々台風や豪雨被害による被害は激しさを増しています。*2

 

日本に住んでいる限り、我々は自然災害と共存するしかありません。

元国土交通省技監である大石久和氏は、自然災害と日本人の文化の関係性に関して興味深い指摘をしています。*3

 

大石氏曰く、

・盤石な地盤の上に位置するヨーロッパ大陸と違い、  日本という国土においては災害によって一瞬にして建築物が消失する。

・そのため日本人は、災害後に人々が力を合わせて復興を目指し、  新しい社会を作り上げていくことで歴史を紡いできた。
(一方で、ヨーロッパ等では外敵に備えて城壁で町を囲み、有事に備えて町を防衛する分業体制をつくることに長けてきた)

とのことです。

 

言い換えれば、日本人は有事に備えるということは苦手である一方、有事が起きた際の復興力に長けているといえます。

 

それでは、現代において、自然災害と地域コミュニティーにはどのような関係性があるのでしょうか。

 

そこで、2011年に発生した東日本大震災について見てみます。

朝日新聞がまとめたデータによると、震災後の岩手・宮城・福島県では、現地コミュニティーに以下のような影響が発生しています。*4

 

・岩手・宮城・福島(特に沿岸地域)における子どもの数が減少

・同3県における女性の数が減少

・同3県における労働従事者が減少

 

震災発生後、海外の人々に最も驚かれたのが、整然と列を成して列に並ぶ日本人の姿だったことは印象的でした。

有事の際に結束の強さを発揮する日本人ならではの光景といえます。

 

一方で、上記のような(決して小さくない)負の影響が、現地のコミュニティーに生じてしまっていたのです。

 

日本はこの数十年間で大きく変化しました。

高度経済成長を経て人口の都市集中が進み、少子高齢化が急速に進行することで、コミュニティーが希薄化していることが指摘されています。

 

地域コミュニティーの希薄化は、孤立死や生活困窮、虐待など深刻な問題を引き起こします。*4

 

日本人が強みとしてきたコミュニティーによる結束力が失われることで、災害からの復興力までも失われているのではないか・・・

と危惧せざるをえません。

 

かといって、かつての平屋社会や農村社会に戻ることなどできません。

 

現代日本に合った、新しいコミュニティーの形が、私たち日本人にとっては特に必要なのかもしれません。

 

【参考資料】

*1 一般財団法人国土技術研究センター 「国土を知る / 意外と知らない日本の国土」

*2 気象庁 「1 気候変動に伴う災害の激甚化・頻発化」

*3 大石久和 著『「国土学」が解き明かす日本の再興 ― 紛争死史観と災害死史観の視点から』(海竜社, 2021)

*4 被災地と少子化 データから見る東日本大震災

*5 名古屋市 「現状と計画策定の背景」