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ジェロントロジーに関する耳寄りな情報 第59回(ジェロ・マガ Vol.59[2023年7月4日]より一部抜粋)

このコーナーでは、ジェロントロジーに関連する、日々の生活や今後の生き方に役に立つ、あるいは「耳寄りな」情報をお届けいたします。

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今回は、「幸せな人生に必要な人とのつながり」について、IAGGアジア/オセアニア国際老年学会議(6月12~14日開催)でのエピソードと、6月20日に発売された書籍『THE GOOD LIFE』のご紹介とあわせて、みなさまと探っていきたいと思います。

IAGGアジア/オセアニア国際老年学会議とは、世界の中でも高齢化の著しいアジア・オセアニア地域の方々と、高齢化に関する諸課題の解決策について、研究成果や取組を発信する場です。

実はVol.47でもお伝えした、道の駅を活用した高齢ドライバーの運転寿命・健康寿命延伸の事業(秋田県)成果について、当該事業の検討委員である秋田大学高齢者医療先端研究センター長の大田教授に、ポスター発表をしていただいた関係で、私どもも会場を訪ねた次第です。

印象的だったのは、日本のみならず韓国やオーストラリアでも高齢ドライバーについては高い関心事となっていたことです。

デジタル技術の活用や、運転適性を評価する手法の開発、また認知症手前の段階である「軽度認知障害(MCI)」の状態にある方を対象とした介入や研究の現状について、発表がありました。

ただ、各国ともにまだまだ「手探り」の状態であり、更なるデータと介入の蓄積が必要であることを再確認いたしました。

…前置きが長くなってしまったのですが、ここからが本題です。
ポスター発表の中で、韓国の若手研究者が発表していた高齢ドライバーに関する研究で、目を引くテーマがありました。

「運転をやめることで高齢者は不幸になる?~韓国の高齢者における地域環境満足度の役割~」という趣旨のものです。

運転が(特に地方の高齢者にとって)幸せな人生を過ごすための
手段であるならば、運転をやめた高齢者はどう幸せに過ごすのか?

「運転寿命と健康寿命の延伸」を掲げて事業をしながらも、いつか運転を諦めなければならない日がくる中で、どうすれば「できなくなったこと」にうまく折り合いをつけながら、「できること」に目を向けて幸せに過ごしていけるのか、ということも事業とは別に、個人的な関心として抱いていました。

発表者と話す中で、配偶者や友人・知人といった人とのかかわりを「地域環境満足度」とし、その度合いが高ければ、運転をやめても幸福感は高い状態が維持された、という研究結果を教えてもらいました。

結果もさることながら、人とのかかわりを「地域環境満足度」の指標に設定した着眼点に魅力を感じ、短い時間ではありましたが、興味深い意見交換をすることができました。
(英会話スキルの未熟さを思い知るひとときでもありました…)

その一週間後、書店で偶然出会ったのが『THE GOOD LIFE』です。
「ハーバード成人発達研究」という、2,000人以上に対して80年(!)以上に及ぶ追跡調査を行った結果をもとに書かれたものです。

本書では「よい人間関係は、人間の幸せに不可欠である」という一貫したメッセージ(=研究結果)を掲げており、研究で使用された質問票や研究中のエピソードを紹介しながら「よい人間関係」がなぜ大切かを述べたものとなっています。

ダイジェストは、このタイトルで検索すれば著書のPR記事を含めかなりの情報がヒットしますので、ここでは割愛します。単に

「幸せになるためのハウツー本」というよりは、被験者1人ひとりの価値観や心の奥深いところに触れていくその研究過程に惹き込まれる1冊となっております。
(研究者と被験者との間に、相当強力な信頼関係が構築されているのであろうこともうかがえます。)

そこそこ分厚いですが、読んでいても迷子になりづらい構成のうまさがありますので、ご関心のある方は、一度お手に取ってみてはいかがでしょうか。