ジェロントロジーに関する耳寄りな情報 第63回(ジェロ・マガ Vol.63[2023年9月5日]より一部抜粋)
このコーナーでは、ジェロントロジーに関連する、日々の生活や今後の生き方に役に立つ、あるいは「耳寄りな」情報をお届けいたします。
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今回は「労働」について取り上げたいと思います。
まず日本の労働時間の上限について、労働時間基準法では「1日8時間、週40時間を超えてはいけない」と定められており、1年間はおよそ52週間(≒365日÷7日)とすると、1年間の労働時間の上限は週40時間×52週=2,080時間となります。
この上限2,080時間を踏まえて、世界と日本の比較を見てみます。
経済協力開発機構(OECD)が主要44か国の「労働時間(2022年)」を公表しています。
注記として「このデータは、経時的な傾向の比較を目的としたものです。出典および計算方法が異なるため、ある特定の年における年平均労働時間数の比較には適していません」とされていますので、あくまで参考として捉えて頂ければと思います。
日本は1,607時間(44か国中30位)であり、平均の1,752時間を下回っています。
さきほどの労働時間の上限2,080時間に対して8割程度の時間となっていますが、これは労働時間にフルタイム勤務の他、パートタイム勤務や季節的な労働なども含んでいるためです。
統計の上位3か国および下位3か国の労働時間について、パートタイム雇用率とあわせて日本と比較してみると以下のようになります。
労働時間 パートタイム雇用率
1 コロンビア 2,405時間 12.8%
2 メキシコ 2,226時間 17.0%
3 コスタリカ 2,149時間 16.2%
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平均 1,752時間 16.1%
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30 日本 1,607時間 25.1%
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42 ノルウェー 1,425時間 20.4%
43 デンマーク 1,371時間 17.1%
44 ドイツ 1,341時間 22.2%
中南米の国の労働時間が長く、上位3か国はいずれも日本の労働時間上限の2,080時間を超えています。また、欧州の国の労働時間が短く、これらの国は上位の国に比べてパートタイム雇用率が高いことがとわかります。
一方、日本は下位3か国よりもパートタイム雇用率が高いにもかかわらず、労働時間は長くなっています。欧州の国からすると日本はまだまだ「勤勉」というイメージが強いのかもしれません。
次に高齢者の就労についてです。
「第9回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」(内閣府、令和2年)から、「就労」に関するいくつかの項目(一部抜粋)について日本とドイツを比較してみます。
(1)現在の収入を伴う仕事の有無(%)
日本 自営業 会社役員 フルタイム パートタイム 仕事はしていない
60~64歳 10.8 7.2 27.7 23.1 27.2
65~69歳 11.2 6.6 9.3 23.8 46.0
70~74歳 14.3 4.0 3.2 16.1 59.9
75~79歳 7.0 2.6 0.9 11.3 73.6
80歳以上 4.8 2.6 0.7 1.9 85.0
ドイツ
60~64歳 10.9 3.0 34.3 17.5 34.0
65~69歳 5.8 1.4 6.7 9.1 77.0
70~74歳 7.4 0.5 7.8 6.4 77.9
75~79歳 3.6 3.1 6.7 1.5 85.1
80歳以上 3.6 ― 7.1 1.8 86.9
前段の「労働時間」が最も少ないドイツでしたが、高齢者のうち働いている人の比率も日本に比べて低いです。ただし、フルタイムで働く高齢者の比率は日本と比べて高いことがわかります。
(4)今後の就労意欲(%)
日本 続けたい 辞めたい
60~64歳 73.3 22.6
65~69歳 51.0 43.7
70~74歳 42.5 49.5
75~79歳 25.1 60.6
80歳以上 13.5 62.9
ドイツ
60~64歳 62.3 36.2
65~69歳 23.4 74.2
70~74歳 21.6 78.4
75~79歳 10.3 87.6
80歳以上 7.7 92.3
全ての年代において日本の方が、仕事を続けたいという割合が高い結果となっています。
(5)就労の継続を希望する理由(%)
仕事が面白い 体によい
日本 収入がほしい ・活力になる ・老化を防ぐ
60~64歳 67.1 11.2 12.6
65~69歳 54.5 17.5 21.4
70~74歳 46.2 16.5 28.5
75~79歳 36.2 10.3 34.5
80歳以上 16.7 33.3 30.6
ドイツ
60~64歳 43.7 34.7 18.6
65~69歳 22.4 61.2 12.2
70~74歳 27.3 54.5 13.6
75~79歳 25.0 40.0 35.0
80歳以上 23.1 53.8 23.1
年代が上がるとともに健康面を理由とする割合が上昇するのは共通する一方で、日本は収入面、ドイツは仕事の面白さや活力となることを重視する結果となっています。
労働時間の多寡もさることながら、高齢になっても働く理由などについて、国や年代によって様々であることがわかります。
「働き方改革」という言葉を聞くようになって久しいですが、最近では働く時間や場所に捉われない柔軟な働き方が少しずつ認められるようになってきています。
上記の調査結果なども参考にして頂きながら、ご自身の理想のワークライフバランスについて考えるきっかけとして頂けましたら幸いです。
