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ジェロントロジーに関する耳寄りな情報 第65回(ジェロ・マガ Vol.65[2023年10月3日]より一部抜粋)

このコーナーでは、ジェロントロジーに関連する、日々の生活や今後の生き方に役に立つ、あるいは「耳寄りな」情報をお届けいたします。

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今回は「経済効果」について書きたいと思います。

日本では大きなイベントがあると、よくテレビや新聞などでその「経済効果」が報道されます。例えば「オリンピック開催の経済効果」、「WBC優勝の経済効果」などです。
最近では、阪神優勝の経済効果がニュースとなっていました。

阪神優勝なら経済効果872億円余 専門家が試算

経済効果は、何かのイベントが「起こった場合」と「起こらなかった場合」の経済状況を比較し、前者の場合で増えている消費額やGDPによって表されます。
その際には、一定の想定をした上で(阪神優勝の場合は、グッズ購入や飲食、祝賀セールでの買い物などが増加すると想定しています)、財・サービスの取引関係を表している「産業連関表」を使って推計することが多いです。

※産業連関表のイメージをお伝えするのは難しいですが、大分県の資料の説明が比較的分かり易いです。

報道される経済効果は数百億円、数千億円単位であることが多いので、この結果を見て、そのようなイベントが起こる/行われると、日本の経済状況が改善する!と思われるかもしれません。

ただ、よくよく考えてみると、我々が持っているお金は無限ではないですよね。
阪神優勝の例ですと、グッズ購入や祝賀セールでの買い物等を増やしたとしたら、そこでお金を使ってしまったので、別のモノやサービスを購入するのをガマン(節約)しよう、と思われる方が多いかと思います。

しかし、上記の経済効果の試算では、その節約の影響(別のモノ・サービスの消費が減るのでマイナスの効果です)は含まれていません。
よって、公表されている経済効果の数字を、日本経済全体の効果と考えてしまうと「過大」ということになります。

上記の例ですと、阪神関連の消費はもしかしたらそれぐらい増えるかもしれませんが、一方で別のところで消費にマイナスの影響があるので、日本経済全体に及ぼす効果はそれほど大きくない、と考えるのが妥当です。
マスコミの報道ではそこまで伝えないため誤解を生んでしまっていますが、覚えておいて頂ければと思います。

ただし、国が投資する公共事業など(高速道路やリニア新幹線などが挙げられます)についても「経済効果」が試算・公表されることがありますが、その場合は先ほどの理由による過大推計はありません。なぜなら、国は自らお金を創ることができ、その投資したお金の分、他を減らす必要は必ずしもないからです。

日本総合研究所では過去、高速道路整備等による経済効果を試算してきました。
以下は、これまでに整備された圏央道約270㎞がもたらした経済効果(圏央道約270㎞がある現状の経済状況と、圏央道がなかった場合の仮想的な経済状況を比較した差)を推計したレポートです。

また、外国人観光客が増加することによる経済効果が試算されることもありますが、その場合はお金を落としてくれるのは外国人で、日本人の財布には直接的には影響がないため、こちらも阪神優勝のケースのような過大推計はありません。ただし一方で、現在地域によっては問題になっている観光公害(オーバーツーリズム)等の負の影響は考慮されていない推計がほとんどです。

このように、何かが起きた時の経済効果の推計の際にはマイナスの影響が考慮されていないことが通常ですので、新聞などで「経済効果」について見かけた時は、少し眉につばをつけて見るようにしてもらえればと思います。