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ジェロントロジーに関する耳寄りな情報 第67回(ジェロ・マガ Vol.67[2023年10月31日]より一部抜粋)

このコーナーでは、ジェロントロジーに関連する、日々の生活や今後の生き方に役に立つ、あるいは「耳寄りな」情報をお届けいたします。

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今回は「おしゃれと健康長寿」について書きたいと思います。

高齢化が進む日本では、日々の生活を生き生きと過ごせるアクティブシニアを増やそうとする取り組みが各地で行われています。

例えば、江戸川区の西葛西図書館では、先日、60歳以上の男女を対象に、おうちで出来るスキンケア・お化粧の体験する「いきいき美容教室」が開かれました。
いきいき美容教室「化粧のちからで介護予防、健康寿命をのばそう!」

化粧がどのように介護予防につながるのか、化粧が体に与える影響を見てみましょう。

まず、「心」への影響として、化粧をすることで前向きな気持ちになり、幸福感が高まることによって抑うつや不安の改善につながると研究結果があります。

つぎに、「脳」への影響として、化粧品を選ぶ際に脳は思考し、手にとって使う行為によって五感に刺激が与えられます。

「身体」への影響として、化粧には、化粧品のふたを開けたり、口紅やファンデーションを塗ったり等、様々な動作があります。

こうした動作を日常的に続けることで、筋肉の衰えを防ぐことができます。

最後に、「口腔」への影響として、化粧を行うことで嚥下反射に関わる神経伝達物質が増加することがこれまでの研究で報告されており、化粧をすることで唾液の分泌が促され、口腔ケアにも良い影響を与えることができます。

このように、化粧をすることで精神的にも身体的にも良い影響が与えられることはこれまでの研究から明らかで、こうした化粧の効果を通じて、高齢者の方の心身機能や生活の質を維持向上させ健康長寿を目指すものを「化粧療法(メイクセラピー)」といい、アクティブシニアを増やしたいと考える自治体や、介護の現場で注目されています。
資生堂ライフクオリティー ビューティーセミナー 化粧療法研究室

また、「化粧」もふくめた「おしゃれ」というもの自体に健康長寿につながる効果があります。
高齢者の中には、病気や介護をきっかけに家にこもりがちとなってしまい、おしゃれに対する興味が薄れている方も多いかもしれません。その結果、外出や交流の機会が少なくなることによって、社会から孤立してしまう恐れがあります。

高齢者におけるおしゃれと身だしなみへの関心とQOL(生活の質)との関連に関して、全国の70歳以上の高齢者を対象に、服装や流行への関心と外出着の着装基準、外出の頻度、ボランティアや町内会活動への参加が過去に調査されました。
高齢者における装いへの関心とQOLの関連

その結果、服装や流行への関心が高い高齢者は、関心が低い高齢者と比較して、町内活動やボランティア活動に積極的に参加していること、そして活動能力や生きがい感も高く、メンタルヘルスも良いことが明らかにされました。

内閣府の「平成29年度版高齢社会白書」では、社会的な貢献活動に参加することは、介護や認知症の予防、生きがい創出といった良い影響を高齢者自身にもたらすことが示されています。
内閣府 平成29年度版高齢社会白書(概要版) 3 社会的な貢献活動への参加

高齢者がおしゃれに興味を持つことは、自信や喜びをもたらし、積極的に外出・交流機会を持とうとするきっかけとなり、社会からの孤立の恐れを軽減させることができます。
また、周囲の人とのコミュニケーションを増やし、心の健康の維持・向上が出来れば、健康長寿の効果も期待できます。
男女問わず、自分に似合うおしゃれや、自分をより良く見せるおしゃれは、わたしたちが生き生きと自分らしく生きることに良い影響をもたらします。
人生100年時代といわれる今の日本ですが、もちろん、おしゃれも100年続けていきたいものです。