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ジェロントロジーに関する耳寄りな情報 第76回(ジェロ・マガ Vol.76[2024年3月12日]より一部抜粋)

このコーナーでは、ジェロントロジーに関連する、日々の生活や今後の生き方に役に立つ、あるいは「耳寄りな」情報をお届けいたします。

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今回は「全国健康福祉祭(ねんりんピック)」をテーマにお届けします。

耳馴れない言葉だと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、「ねんりんピック」は、厚生省(現 厚生労働省)の設立50周年を記念して1988年に開始された60歳以上のスポーツ・文化の祭典で、「高齢者を中心とする国民の健康保持・増進、社会参加、生きがいの高揚を図り、ふれあいと活力ある長寿社会の形成に寄与する」ことが目的とされています。
厚生労働省、開催都道府県・政令指定都市・(一財)長寿社会開発センターの主催、スポーツ庁の共催により、コロナ禍の2020年~2021年を除き毎年開催されています。

直近で2023年10月に愛媛県で開催された「第35回全国健康福祉祭えひめ大会」を例に説明させていただくと、大会のプログラムは、

・交流大会:剣道、マラソン、サッカー、水泳といったスポーツに、囲碁、将棋、健康マージャンなどの文化・交流種目を加えた29種目。参加者は各都道府県の代表選手である60歳以上の方で、各種目の最高齢者としてマラソンで86歳、サッカーで87歳の方などが参加。
・健康・福祉・生きがいに関するイベント:健康フェアやニュースポーツ体験、音楽文化祭など。幅広い世代が参加できるイベントもあり。
・オリジナルイベントや各種併催・協賛イベント
・開会式閉会式

などから構成されています。

えひめ大会の参加者数は約53万人(観客を含む)、経済波及効果は約129億円にも達するなど、規模が大きいことも特徴です(直近の大会でも参加者数は40万人~60万人前後を記録)。

また、上記のプログラムで挙げた「オリジナルイベント」は、大会開催趣旨に沿って県の魅力をPRするもので、えひめ大会では県内在住の60歳以上を対象としたeスポーツ大会(ぷよぷよeスポーツ・愛媛場所)が開催されました。eスポーツが高齢者施設に導入されたり、高齢者の健康増進・介護予防に活用されたりする例を耳にするようになりましたが、次回2024年開催の鳥取大会でもeスポーツ(太鼓の達人)が交流大会の種目に採用されるなど、その浸透が感じられます。

スポーツイベントをジェロントロジーとの関連で考えるとまず「健康」というテーマに目が向いてしまいますが、ねんりんピック主催者である長寿社会開発センターは、「ねんりんピックかながわ2022」参加選手に対し、社会参加活動の状況という視点からもアンケート調査を実施しています(『生きがい研究』第29号 令和5年3月発行)。

同調査結果によると、出場選手は約8割が毎週何らかのスポーツや文化活動に参加しているだけでなく、収入を伴う仕事に就いている方は約6割、毎月または毎週地域活動・ボランティア活動に参加する方も約4割いるとのことです。

内閣府「令和3年度 高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査結果」において、地域の奉仕活動に参加するために必要な条件として「自分自身が健康であること」を挙げる方が最も多い(68.1%)ことも踏まえると、健康で社会参加の意欲も高い出場選手の方々は地域の活動においても中心的な役割を担うポテンシャルがあるあるいは既に担っているかもしれませんね。

ねんりんピックは今後、2024年10月に鳥取県、2025年10月に岐阜県で開かれ、2026年には私が住む埼玉県においても初めて開催されることが決定しています。本号で触れてきたように、健康・福祉・生きがいの観点から様々な催しが行われる予定ですので、ぜひ競技者・関係者以外の方も現地に足をお運びいただき、試合観戦やイベントへの参加、そして観光などを楽しまれてはいかがでしょうか。

参考:厚生労働省「全国健康福祉祭(ねんりんピック)の概要」

参考:「ねんりんピック愛顔(えがお)のえひめ2023」

参考:「ねんりんピックはばたけ鳥取2024」

参考:一般財団法人長寿社会開発センター「研究誌『生きがい研究』」

参考:内閣府「令和3年度 高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査結果(全体版)」

参考:埼玉県「全国健康福祉祭(ねんりんピック)について」