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ジェロントロジーに関する耳寄りな情報 第82回(ジェロ・マガ Vol.82[2024年6月11日]より一部抜粋)

このコーナーでは、ジェロントロジーに関連する、日々の生活や今後の生き方に役に立つ、あるいは「耳寄りな」情報をお届けいたします。

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今回は「災害時の口腔ケア」について書きたいと思います。

まず、口腔ケアは何故重要なのでしょうか。

それは、口の中を清潔にすることが、虫歯や歯周病の予防だけでなく、感染性心内膜炎、虚血性心疾患、誤嚥性肺炎等の全身疾患を引き起こす菌の除去、認知症予防、生活の質の向上等々のわたしたちの身体全体の健康と、密接に関連していることが近年明らかになっているからです。

さて、日本において、口腔ケアがメディアで一般的に取り上げられるようになったのは、厚生省(当時)と日本歯科医師会によって1989年に始められた「8020運動(80歳になっても20本以上自分の歯を保とう)」以降の、1990年代頃からだったことが各大手新聞のアーカイブ(※1)から知ることができます。

※1 使用したアーカイブのデータベース
大学図書館や公共図書館で契約されていれば、図書館内の利用者用インターネット端末や回線等で利用可能
・朝日新聞クロスサーチ
・毎索(毎日新聞記事データベース)
・ヨミダス(読売新聞データベース)

当初は、高齢者の介護の文脈で取り上げられており、今も介護予防・健康維持の一環として多くの自治体で口腔ケアに関する講習会(※2)が開かれているかと思います。

※2 千代田区「口腔機能向上プログラム 歯医者さんで介護予防」

 

口腔ケアが災害時にもわたしたちの健康と命を守ることは日本歯科医師会から啓発されていますが(※3)、このことが注目されるようになったのは、阪神淡路大震災時の震災関連疾患死(関連死)として肺炎死が多く見られた原因が、口腔内の清掃が不十分となり免疫力の低下した高齢者が肺炎を引き起こしたのではないかと推測されたからです。

そして、この推測を元に、中越地震の時には組織的に口腔ケア対策した結果、発災した季節が真冬でなかったことや、インフルエンザ予防接種、要支援者の施設移送等のおかげもありますが、阪神淡路大震災と比較して肺炎死/関連死の割合を約40%減少させることができたと言われています。(※4)

※3 日本歯科医師会「歯みがき、お口のケアはあなたの命を守ります!」
※4 足立了平「災害時の口腔ケア」

このように、災害時の口腔ケアが非常に大切なことは理解できると思いますが、口腔ケア用品の備蓄は残念ながら盲点となっていることが多いと思われます。

NHKが今年行った、東京23区・多摩地方の自治体アンケートの結果(※5)によると、口腔ケア用品(液体歯磨き、歯ブラシ等)を備蓄として検討していると回答した区や市は荒川区、練馬区、国立市に限られています。

また、自治体が案内している家庭備蓄や非常時持ち出し品に、口腔ケア用品が含まれているかどうかはまちまちです。

※5 NHK首都圏ナビ「「日ごろの備蓄」「避難の態勢」は 東京23区・多摩地方の自治体アンケート」

 

さらに、断水した場合には液体ハミガキの準備が不可欠です。平時の口腔ケアが無条件で続けられるとは限らないことを想定しなければなりません。本年1月1日に発災した能登半島地震においても、断水が長く続くことから、避難所における口腔ケアが危惧されています。

ここで、災害時の口腔ケアを、あらためてサンスターの提供するコンテンツ(※6)から学びたいと思います。

災害時に起こり得る様々な想定として、「水も歯ブラシもないとき」や「水がすくないとき」等の対処が挙げられています。また、「液体ハミガキ」の使い方も紹介されています。災害に遭う前に、実際に一度試してみることをおすすめします。

※6 サンスター株式会社「覚えてください 防災にオーラルケア」