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ジェロントロジーに関する耳寄りな情報 第83回(ジェロ・マガ Vol.83[2024年6月25日]より一部抜粋)

このコーナーでは、ジェロントロジーに関連する、日々の生活や今後の生き方に役に立つ、あるいは「耳寄りな」情報をお届けいたします。

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今回は「熱中症」について書きたいと思います。

総務省消防庁の発表によると、2023年(令和5年)の熱中症による救急搬送の総数は91,467人で、調査開始以降の最多を記録した2018年(平成30年)の95,137人に迫る人数でした*1。

そのうち、高齢者(満65歳以上)が半数以上(50,173人)を占めています。

また、2015年(平成27年)の東京都と政令指定都市では、熱中症で救急搬送された高齢者の約半数が住宅にいたことが分かっています*2。

このように、実に多くの人が自宅にいるときに熱中症によって倒れてしまっていることが分かります。

それでは次に、近年の夏の暑さがどのように変化しているかを見てみます。過去5年間で、全国11都市において「昼間の日最高暑さ指数(WBGT)」※が「危険」と判定された日の総数を年ごとに比較すると、

・2023年(令和5年):344日

・2022年(令和4年):250日

・2021年(令和3年):143日

・2020年(令和2年):241日

・2019年(令和元年):201日

(いずれも延べ日数。計測都市は、札幌、仙台、東京、名古屋、新潟、大阪、広島、高知、福岡、鹿児島、那覇)

となり、昨年が“特に暑い夏だった”ことが分かります*3。

※昼間の日最高暑さ指数(WBGT): 昼間の、熱中症のおおよその危険度が示される指数。31以上が「危険」と判定され、熱中症の発生が危険なレベルとされている。

今後、より一層地球の平均気温が上がっていくことは確実*4とされており、熱中症の危険度はますます高くなっていきます・・・

余談になりますが、地球温暖化が進行することにより、北極圏や南極圏の氷が溶けだし、海水面が上昇することが指摘されています。実は、氷の融解そのものが地球温暖化に拍車をかけることになります。というのも、北極圏や南極圏に存在している永久凍土には、温室効果ガスであるメタンや二酸化炭素が大量に含まれているからです。それらが解け出して大気中に放出されることで、温暖化を加速させることが指摘されています*5。さらに、光を反射する雪や氷が解け、光を吸収する海や地表が表出することにより、温暖化を加速させる可能性もあり*6、永久凍土は気候変動の「時限爆弾」とも言われています。

話がそれましたが、今後、私たちはより過酷な夏と付き合っていく必要があります。そして、今や私たちの生活に必要不可欠なのが、エアコンです。

ただし、2022年(令和4年)のパナソニックの調査によると、約4割の人がエアコンを我慢するか使用しておらず、その理由として「電気代がかかるから」が最も多く挙げられています*7。

また、上記パナソニックの記事は、特に高齢者の方がエアコンを使わない理由として、「老化に伴う皮膚の温度センサーの感度の低下(暑さを感じにくい)」が挙げられています。しかし、高齢の方は暑さを感じにくいだけでなく

・発汗能力の低下

・身体に含まれる水分量の低下

・脳での察知能力の低下により、喉の渇きを感じにくい

といった熱中症の危険因子があり、暑さをあまり感じなくても積極的にエアコンを使った方がよいでしょう。

「でもやっぱり電気代が気になる・・・」

という方・・・

もしかすると、以下のことを試すことで、大幅に消費電力を抑えることができるかもしれません。

①エアコンのフィルターの掃除

ダイキン工業株式会社の実験*8では、約3年分のホコリがたまったフィルターの掃除の前後で、どのように消費電力等が変化したかを調査しています。その結果、1日の消費電力は2.62kWhから1.76kWhへと低下し、約33%の削減に成功しています。これを1ヶ月分の電気料金(31円/kWh)に換算すると、800円分の削減につながります。

②室外機周辺の掃除・整理

ダイキン工業では、室外機の周辺に障害物を置くことによる影響についても調査しています。室外機の風通しを遮るように段ボールや台車を置いたことによりエアコンの運転効率が下がってしまい、1日の消費電力は3.61kWhまで上昇しています。これによる電気料金の増加は月920円ほどになります。

エアコンの運転効率が下がると、電気代が下がるだけでなく、エアコンの効きも悪くなる可能性があります。

電気代を少しでも抑えて、過酷な夏を乗り切るため、梅雨明け前に一度、フィルター、室外機周辺の掃除・点検をされてはいかがでしょうか。

そして、熱中症にならないために、積極的にエアコンを使用するようにしていきましょう!

<参考資料>

*1 総務省「令和5年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況」

*2 熱中症予防情報サイト(環境省)

*3 熱中症予防情報サイト(環境省)「全国の暑さ指数(WBGT)」

*4 環境省

*5 国立環境研究所 地球環境研究センター「永久凍土は地球温暖化で解けているのか?」

*6 環境省 平成9年版環境白書
第1節 地球温暖化問題の状 ― 2 地球温暖化のメカニズム

*7 Panasonic株式会社「高齢者におすすめしたい エアコンを使った熱中症対策」

*8 ダイキン工業株式会社「フィルター掃除と室外機周辺の片付けによるエアコンの節電効果を検証」