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ジェロントロジーに関する耳寄りな情報 第90回(ジェロ・マガ Vol.90[2024年10月1日]より一部抜粋)

このコーナーでは、ジェロントロジーに関連する、日々の生活や今後の生き方に役に立つ、あるいは「耳寄りな」情報をお届けいたします。

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今回は、私が最近旅行したこともあり、「旅行・観光」について書きたいと思います。

皆さんが旅行に行きたいと思う動機は何でしょうか?「旅先で〇〇を見たい・経験したい」、「おいしいものを食べたい」、「日常生活から解放された時を過ごしたい」など、様々なものがあるかと思います。

旅行はそういった欲求をかなえるものであるとともに、弊所(日本総合研究所)の会長である寺島実郎は、人間が賢くなるために必要なもの、と述べています。2015年に刊行された『新・観光立国論』(NHK出版)の「移動と交流という思想」(p29)より引用します。

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移動は人間を賢くするというのは、おそらく多くの人が自分の生活のなかでも実感していることだろう。(中略)世界を旅してくると、自分が生まれ育った国である日本に対して、考えを新たにする。異なる自然に触れて季節の変化を感じ取る力を身につけ、自分が出会った人の心や言葉から受け取ったメッセージに対して考えを巡らせてみる。自分たちがいかに恵まれていたかに気づき、また、自分の知らないことが世界にはたくさんあることに気づく。そうした気づきのなかから人間は賢くなっていく。
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私自身、今回の旅行で遺跡を見て感銘を受けるだけではなく、異文化や現地の人たちの生活に触れることで自分の知らない世界を垣間見たり、「自分たちがいかに恵まれていたか」と思えるような体験もしました。

外国で異なる文化の人とコミュニケーションする際には、日本語以外の言語を通じてということになるので場合によっては困難が生じますが、日本にいてはできない経験をすることで脳が刺激され、確かに少し賢くなったような気がします。

また、私の今回の旅行はツアーで行ったのですが、年齢層は新婚旅行のご夫婦2組から84歳の女性の方まで、住んでいるところも北は北海道から、西は三重や京都の方がいて、日本国内でも中々接することができない方達といろいろとお話ができたことも、思いがけずよい経験ではありました。

ただ、コロナ禍による移動制限で旅行が行きづらくなった時期が
あったこともあり、日本人の旅行者数は以前よりも少なくなっています。

2024年8月までの日本人の国内旅行者数や海外旅行者(出国者)数は、昨年2023年よりは増加していますが、コロナ禍前の2019年水準までまだ回復していない状況です。

※国内延べ旅行者数、出国日本人数は観光庁ホームページより
確認することができます。

最近の旅行に関する意識調査結果を見ると、コロナ禍期間中に旅行をしなくなってしまったことに慣れてしまい、何となく旅行をせずに過ぎてしまった、というケースも多いように見受けられます。また、国内旅行であれば観光地の混雑やホテル価格の上昇、海外旅行であれば円安なども、旅行に行くことを妨げる要因となっているようです。

※参考にした旅行に関する意識調査
日本交通公社「JTBF旅行意識調査」
JTB総合研究所「国内旅行・海外旅行への意識調査」

一方、外国人が日本を訪れる訪日外国人旅行者数の増加は著しく、最新の2024年8月データまで7カ月連続で同月過去最高を記録しています(こちらも上記の観光庁ホームページで確認できます)。また、外国人が日本を訪れた際に消費する金額も大きく増加しており、最新の2024年4-6月期のデータでは2019年4-6月期と比べて68.6%も増加しています。

本年の6月に公表された令和6年版観光白書(弊所が一部執筆の支援を行いました)では、円安傾向や欧米諸国と比較して物価上昇が緩やかなので日本の財・サービスには相対的な割安感があり、訪日外国人の消費額を促した可能性がある、と分析しています。

令和6年版観光白書 第I部 観光の動向 p23

私の住む東京でも、確かにコロナ禍以前よりも多くの外国人を見かけるようになった実感があります。地域・観光地によっては、訪問客の著しい増加等が、地域住民の生活や自然環境、景観等に対して負の影響をもたらすという「オーバーツーリズム」が問題となっているところもありますが、日本国内での外国人との交流という意味では、以前よりも経験しやすくなっているのかと思います。

最後に、日本国内での外国人との交流促進へのヒントとして、ジェロントロジー推進機構の前身であるジェロントロジー研究協議会が行った取組(観光人材育成のためのプレ研修)をご紹介します。

本研修では観光に関わる学習や社会参画に関心のある方22名に参加して頂き、観光客おもてなしプランのアイディア出しやコミュニケーションの方法などを学んだ後、多摩大学に来られている留学生を外国人観光客に見立てて、日本でぜひ体験してもらいたいという「おもてなしプラン」を提案し、実際にそのプランを実施してもらいました。その模様を以下の動画でご覧になれます。

動画内でのコメントにもあるように、多摩大学の留学生からは、日本の生活や文化をより知ることができたということで、非常に好評でした。

このような研修の取組はコロナ禍があり頓挫してしまいましたが、取組自体は有意義なものであったと考えています。皆さんももし日本で外国人をもてなすとしたら、どのような場所に連れて行き、どのような体験をしてもらいたいか、ご自身の「おもてなしプラン」を考えてみてはいかがでしょうか。