ジェロントロジーに関する耳寄りな情報 第91回(ジェロ・マガ Vol.91[2024年10月15日]より一部抜粋) このコーナーでは、ジェロントロジーに関連する、日々の生活や今後の生き方に役に立つ、あるいは「耳寄りな」情報をお届けいたします。 —-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—- 今回は、10月11日(金)に弊所((一財)日本総合研究所)から発刊した『全47都道府県幸福度ランキング2024年版』に関して話題提供をさせていただきたいと思います。 地域を「幸福」という尺度で順位付けするいわゆる「幸福度ランキング」という調査・研究は世の中でも各種様々行われております。 そもそも幸福とは、人によって感じ方が違い、大変主観的なものであり相対的なものでもあり、一概に計測できるものでないと考えています。 その上で、弊所の「幸福度ランキング」では、幸福に関して一定の基準を定義することで、自らの置かれた現状を客観的に納得感を持って捉えるとともに、今後目指していくべき地域社会の幸福に対する思考を深めることができるのではないかとの仮説のもと、「幸福度」という指数化を試みています。 「地域の幸福をどう創るか」を探求するために始まったこのプロジェクトは、2012年12月に「日本でいちばんいい県 都道府県別幸福度ランキング」を発刊してから2024年版で7冊目の書籍となります。 1冊目において、地域の社会的状況や構造を示す5つの基本指標と、人々の幸福感を具体的に評価する尺度として健康、文化、仕事、生活、教育の5分野・50指標を設定し、合計55指標を総合して都道府県別の「幸福度ランキング」を算出しました。 1年おきに発刊するごとに、このプロジェクトを進化させるべく、社会の重要な動向や幸福度に関する議論等を踏まえて5指標ずつ追加しており、2024年版では85指標もの指標で都道府県ごとに分析を実施しました。 (政令指定都市全20市、中核市48市についても別の指標数で分析しています。) 2024年版では新たに未来に地域をつないでいくために地域のレジリエンス(耐久力)の観点から以下の5指標を追加しました。 ・人口非集中地区の若者率 (選定理由) 地域の文化・産業・防災機能などの地域力を維持していくためには若者の力が必要となります。人口非集中地域における、担い手の人口動態を捉える指標として選定。 ・防災士認証登録者数 (選定理由) 災害の規模が大きいほど、地域における自助、共助が重要となります。地域全体の防災力の中核となる、防災や災害対応の知識を身に付けた人材の養成状況を測る指標として選定。 ・家庭内育児バランス (選定理由) 男女いずれかに子育ての負担が偏らないよう、性別によらず、育児に主体的にかかわる仕組みづくりや意識改革が求められています。家庭における育児時間の偏りを測る指標として選定。 ・農業の6次産業化伸び率 (選定理由) 持続的な農業の実現には、生産のみならず、加工、流通、調理(消費)までを含む「食のバリューチェーン」の強化が重要です。「稼げる農業」の創出状況を測る指標として選定。 ・無形民俗文化財数 (選定理由) 地域独自の文化の衰退は、郷土愛や住民の結束感の減少にもつながります。「人との繋がり」の力により、継承努力が続けられてきた文化資源の豊富さを測る指標として選定。 そして2024年版における総合順位を少しだけご紹介すると、都道府県総合ランキングでは教育分野が充実している福井県が6回連続の1位、政令指定都市では仕事分野を除く全ての分野で順位を上げたさいたま市が1位、中核市では盤石な産業を背景に多数の指標で上位となっている豊田市が1位となっております。 皆様の住んでいる自治体 、もしくは近隣の自治体についても個別にカルテ(指標ごとの順位)を掲載しておりますので他の自治体と比較して、どのような部分が強みまたは弱みとなっているのか、把握することができます! そのほか、総合ランキング以外でも担い手の確保・育成に資する指標での分析や子どものチャレンジ精神が育まれる環境の分析なども掲載しております。 詳しくは書籍にてご確認いただけますと幸いです! 【書籍のご紹介ページ】 ※書籍のご購入につきましては、お近くの書店もしくは日総研出版よりお買い求めください。 最後に、本書は「ランキング」と謳っているとおり、順位をつけ、客観的指標から自治体の状況を比較しています。しかし、順位が上位だからよい、下位だから悪い、というわけではなく、大切なのは地域の現状を認識し、そして社会の変容を適切にとらえ、次にどのような行動をとるかということだと考えています。 「幸せは自分でつかむもの」という言葉があるとおり、「幸福度」の順位が高い県に住んでいるからといって、それだけで幸せを実感できるとは限りません。 ただでさえ行政サービスの縮小・効率化が進むなか自治体がいくら頑張ったとしても、住民の協力が得られなければ徒労に終わってしまいます。 地域の幸福とは、そこに住む人々、自分自身が、「自ら考え」「支え合い」「行動する」ことで、実感していくものであると考えています。