NEWS

ジェロントロジーに関する耳寄りな情報 第94回(ジェロ・マガ Vol.94[2024年11月26日]より一部抜粋)

このコーナーでは、ジェロントロジーに関連する、日々の生活や今後の生き方に役に立つ、あるいは「耳寄りな」情報をお届けいたします。

—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-

今回は、私がランニングを趣味としており、また最近ではアクティブ・シニアの方々が多くいらっしゃることから、ランニングを含む身体活動・運動について、ご紹介したいと思います。

身体活動・運動の重要性は今さら言うまでも無いこととは思いますが、例えばどの程度の量・質(負荷・種類)が適正か、その効果はどのようなものがあるか等については、普段から深く考える機会はあまり多くはないように思います。厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」※1によると、高齢者には「3メッツ以上の身体活動を15メッツ・時/週以上行うことに加え、多要素な運動を週3日以上取り入れること」を推奨しています。

「メッツ」とは、身体活動の強度を表す指標であり、安静座位時は1メッツ、歩行の強度は3メッツに相当するそうです。具体的には、「歩行又はそれと同等以上の強度の身体活動を1日40分以上行うことを推奨する(1日約6,000歩以上に相当)」となっています。例えば、毎日40分(約4,000歩)歩けばほぼ週15メッツ・時に相当し、3メッツ未満の生活活動(家事等)は約2,000歩に相当するため、1日の合計は約6,000歩となります。また、「多要素な運動」とは、筋力、バランス、柔軟性等の複数の体力要素を高めるための「有酸素運動、筋力トレーニング、バランス運動等の組み合わせや、体操やダンス、ラジオ体操、ヨガ等の多様な動きを伴う運動」とのことです。

身体活動・運動の効果ですが、殆ど運動しない高齢者と比べて総死亡及び心血管疾患死亡のリスクが約30%低下し、また多要素な運動によって、15~66%の転倒・骨折リスク低減や身体機能の維持・向上が期待できるそうです。

これまで見てきた各要素を生活に当てはめると、普段通りの生活を送りつつ、日頃から多少歩くことを意識するとともに、コミュニティでの活動(ダンス・ヨガ教室、ラジオ体操等)に参加すれば十分に達成できそうな目標かと思います。

次に、もう少し上級者のために、有酸素運動の1つとしてランニングを取り上げたいと思います。日本老年医学会の「日本人筋肉量の加齢による特徴」※2によると、個人差はあるものの、筋肉の萎縮・衰退は40歳くらいから始まるとされ、なかでも下肢の筋肉量減少が大きい(50歳で約10%、80歳で約30%)とされています。そのため、40代以降から意識的に下半身を鍛えることは重要であり、ランニングで強化できる遅筋(持続的に力を発揮できる筋肉)は、速筋(瞬間的に力を発揮できる筋肉)と異なり、加齢による衰えが小さいと言われています。ランニングには他にも、心臓の健康増進やコレステロールの低減、メタボリックシンドロームの改善、基礎代謝の向上、骨密度の向上、免疫力の強化、認知機能の向上等、数多くの効果があります。

ちなみにマスターズのマラソン日本記録※3はM60(60~64歳)が2時間36分30秒、M70(70~74歳)が3時間7分42秒、M80(80~84歳)が3時間30分18秒となっています。マスターズランナーは必ずしも元アスリートや陸上部出身者だけではありませんので、年齢を重ねても努力すれば達成することができる好例と言えます。

※1 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」

※2 日本老年医学会「日本人筋肉量の加齢による特徴」

※3 日本記録認定協会「マスターズ陸上の日本記録一覧」