ジェロントロジーに関する耳寄りな情報 第98回(ジェロ・マガ Vol.98[2025年1月28日]より一部抜粋) このコーナーでは、ジェロントロジーに関連する、日々の生活や今後の生き方に役に立つ、あるいは「耳寄りな」情報をお届けいたします。 —-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—- さて、今回はワクチン接種に関する情報を2点お届けいたします。 1点目は、高齢者を対象とした帯状疱疹ワクチン接種の定期接種化に関する情報です。これまでは任意接種のため、8千円~4万円ほどの費用負担が生じていました。しかし、昨年末に、以下のようにNHKで報道されましたように、2025年4月以降で、原則的に65歳以上の方々を対象に帯状疱疹ワクチン接種にかかる費用に対して、全部または一部の公費負担が開始される予定です。自己負担額は各自治体によって異なる見通しのため詳細は不明ですが、このような話があるということで、まずはお気に止めて頂ければ幸いです。 なお、帯状疱疹の詳細については、たとえば、こちらのような情報サイトもありますので、参考にして頂ければと思います。 帯状疱疹自体は命に直結するという話ではありませんが、帯状疱疹に罹った後に続く神経痛(帯状疱疹後神経痛〈PHN〉)は従来より指摘されており、痛みがあるため、いわゆる生活の質〈QOL〉を下げてしまう恐れがあります。 2点目にお伝えするのは、ワクチン接種に関する副反応についての国の制度の紹介です。参考書籍を調べる中で、ワクチンの安全性評価の仕組みとしての「副反応疑い報告制度」と、健康被害救済としての「予防接種健康被害救済制度」は異なっていることがあまり知られていないことに関する記載を見つけましたので、ここでご紹介させていただきます。 前者は医療機関などが厚生労働省へ報告する制度で、後者は、本人または配偶者などが、予防接種を受けたときに住民票を登録していた市町村に対して申請する制度です。つまり、報告・申請する主体とその内容が異なります。万が一、重篤な副反応が生じた場合には、後者の「健康被害救済制度」の活用をご検討ください。 というのも、ワクチン接種は100%の安全を保証するものではありません。接種者100万人に対して数人程度は重篤な副反応を呈する方が現れるとも言われます。しかし、それでも個人の重症化予防や社会での流行阻止などに貢献するものとして有効性や安全性の認められたものが予防接種の対象とされています。そのため、万が一、重篤な副反応が生じた場合に対する補償は必要不可欠な制度です。この「健康被害救済制度」については、予防接種と健康被害との因果関係についての認定をめぐって不十分さを指摘する専門家の声もありますので、今後の展開に注目したいです。 〔参考書籍〕 ・中村祐輔『ゲノムに聞け 最先端のウイルスとワクチンの科学』文春新書、2022年3月 ・中屋敷均『ウイルスは生きている』講談社現代新書、2016年3月 ・宮坂昌之・定岡知彦『ウイルスはそこにいる』講談社現代新書、2024年4月 ・宮坂昌之『免疫力を強くする 最新科学が語るワクチンと免疫のしくみ』ブルーバックス、2019年12月 ・山岡淳一郎『ルポ副反応疑い死』ちくま新書、2022年12月 ・山内一也・三瀬勝利『ワクチン学』岩波書店、2014年2月 ・山本太郎『感染症と文明 共生への道』岩波新書、2011年6月 ・吉村昭彦『免疫「超」入門 「がん」「老化」「脳」のカギも握る、すごいシステム』ブルーバックス、2023年11月