ジェロントロジーに関する耳寄りな情報 第100回(ジェロ・マガ Vol.100[2025年2月25日]より一部抜粋)
このコーナーでは、ジェロントロジーに関連する、日々の生活や今後の生き方に役に立つ、あるいは「耳寄りな」情報をお届けいたします。
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さて、皆さまはスポーツ観戦をされますでしょうか。文部科学省スポーツ庁の調査によると、1年間で[直接現地]でスポーツを観戦した割合は25.9%であるのに対し、[テレビやインターネット]で観戦した割合は68.1%となっています。年代別では、[直接現地]は10代、[テレビやインターネット]は70代で、それぞれ観戦した割合がもっとも高くなっています。また、[直接現地][テレビやインターネット]ともに、プロ野球は全年代を通じてもっとも観戦されたスポーツになっており、その人気の根強さが印象的です。
調査結果をもう少し詳しく見てみると、60代・70代では[直接現地]で観戦した割合は、全体に比べ少なくなっている一方、[テレビやインターネット]で観戦した割合は、全体に比べ10ポイント近く高い傾向が見られます。
さて、健康のために運動・スポーツをすることを勧められているのをよく耳にしますし、実際にスポーツをする人のもっとも大きな理由として、「健康のため」が挙げられています。一方、最近の研究では、「スポーツを観ること」にも健康への好影響がある可能性が分かってきました。今回は、スポーツ観戦が健康に与える影響について、2つの研究をご紹介します。
1つ目は、早稲田大学と西武ライオンズによる共同研究です。この研究では、まず特定のチームを応援していない65歳以上の方が、プロ野球を観戦した際の感情や幸福の面においてどのような変化がみられるか比較しました。そこでは、特定のチームを応援する目的がなくとも、野球場で観戦する場合、観戦前は平常時に比べリラックス感が高まり、観戦後には主観的幸福感が高まることが確認されました。そして、西武ライオンズのファンクラブに加入していない65歳以上の方を、無料観戦券を提供し約2か月間自由に観戦したグループと、2カ月間プロ野球の観戦を禁止したグループの2つに分けたところ、プロ野球を観戦したグループでは、認知機能や抑うつ症状が改善したことが確認されました。この研究では、特定のチームを応援していなくとも、プロ野球を[直接現地]で観戦することが、高齢者の健康に良い影響を及ぼすことが示されました。
ご紹介するもう1つの研究は、(公財)明治安田厚生事業団体力医学研究所による研究です。この研究では、6千人以上の方を1年間追跡して、スポーツ観戦の頻度と健康状態や生活習慣との長期的な関係性について調査しています。まず、[直接現地]でスポーツを観戦する人は、その頻度が高いほど、1年後に心理的高ストレス状態や脂質異常症になるリスクが低く、生活習慣の改善に対して無関心になるリスクが低いことが示されました。さらに、[テレビやインターネット]でスポーツ観戦を行った場合にも健康への好影響があることが示唆されています。すなわち、メディアでのスポーツ観戦の頻度が多い人ほど、1年後に身体活動不足や朝食欠食になるリスクが低く、幸福感が高いことが分かったそうです。
しかしながら、メディアでの観戦の場合、高血圧や糖尿病、高BMIとなるリスクが高い可能性が示されました。この点については、座ったままで飲食をしながらのスポーツ観戦、いわゆる「カウチポテト」(ソファに寝転んでポテトチップなどを食べながらテレビを見ること)が影響を与えている可能性を指摘する著者のコメントもついていました。
実際にスポーツをすることのみならず、「スポーツを観ること」が健康に好影響を与えることが明らかになってきました。研究結果が示すように、スポーツ観戦は心身のリフレッシュにもなります。ぜひ、好きな競技、好きなチームを見つけて、健康にもつながるスポーツ観戦を楽しんでください!
★引用/参考
・文部科学省スポーツ庁令和5年度「スポーツの実施状況等に関する世論調査」
・株式会社西武ライオンズ「【早稲田大学・株式会社西武ライオンズ 共同研究 結果報告】- “プロ野球観戦は高齢者の健康に良い影響を及ぼすことを証明“」
・公益財団法人明治安田厚生事業団「スポーツを観るとこころが元気に!現地観戦はもちろんメディア観戦でも―世界初!スポーツ観戦の長期的な健康効果を解明―」
