ジェロントロジーに関する耳寄りな情報 第107回(ジェロ・マガ Vol.107[2025年6月10日]より一部抜粋)
このコーナーでは、ジェロントロジーに関連する、日々の生活や今後の生き方に役に立つ、あるいは「耳寄りな」情報をお届けいたします。
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今回は、生活習慣、という観点から、朝食と健康をテーマにお伝えできればと思います。
昨年9月、名古屋大学の小田裕昭教授が率いるチームが、「朝食抜きと不活動」と「内臓脂肪の増加」に関係がある可能性について発表しました。*1
研究では、運動不足のモデルとして坐骨神経を切除したラットを用意し、脂肪分を多めに含んだエサを11日間食べさせました。ラットが活動を始めて(朝)から4時間はエサを与えない「朝食無し」(15匹)と、いつでも食事を食べられるグループ(14匹)に分けたところ、体重増加と食べた量には違いが無かった一方で、「朝食無し」の方が内臓脂肪組織の重量が増加することが示されました。
これは、小田教授らの過去の朝食抜きや運動不足の研究では観察されなかった結果であるため、運動不足と朝食抜きが、相乗的に内臓脂肪の急激な蓄積を促していることを示唆している、ということです。
運動不足は、肥満や2型糖尿病、心血管疾患など、様々な疾患を引き起こす因子であることが知られており、現代人にとって極めて重要なリスクといえます。*1
厚生労働省の令和5年「国民健康・栄養調査」*2によると、運動習慣のある人の割合は、男女ともに有意な変化は無いものの、歩数の平均値はこの10年で有意に減少しています。
男性:7099歩→6628歩
女性:6249歩→5659歩 (それぞれ平成25年・令和5年)
また、朝食抜きの習慣も、世界的に問題視されています。アメリカやヨーロッパの子どもや青少年のほぼ10~30%が朝食を抜いていると報告されている*1ほか、日本での令和5年調査*3では、なんと20-29歳男性の36.4%、女性の30.6%が朝食を抜いています。
(全年齢では13.6%)
小田教授らの過去の研究では、朝食抜きと脂質代謝の関係を調べたところ、朝食抜きのラットに高脂肪食や高ショ糖食を与えると体重が増加し、高コレステロール食を与えると肝臓脂肪の蓄積が見られたとのことです。さらに、これらのラットは概日リズムの遅延を示したことから、朝食は概日時計(体内時計)にも重要な役割を果たしていることが明らかになっています。別の研究では、肥満やメタボのリスクがある人は(一日の総摂取カロリーが同じでも)夕食よりも朝食にカロリーを多く配分すると、体重やウエストが減りやすいことが示されています。*4
以上の研究結果を踏まえると
・朝食を抜かずに、しっかりと食べる
・適度な運動習慣を心がける
ことが、肥満やメタボ予防、さらには体内時計にとっても重要のようです。体調を崩しやすいこの時期だからこそ、食事・運動習慣を見直してみるのはいかがでしょうか。
<参考文献>
1. Nakajima, S., Hanzawa, F., Ikeda, S., & Oda, H. Physical inactivity and breakfast skipping caused visceral fat accumulation in rats. Sci Rep 14, 22644 (2024). https://doi.org/10.1038/s41598-024-68058-7
2. 厚生労働省「令和5年「国民健康・栄養調査」の結果」
3. 厚生労働省「令和5年国民健康・栄養調査報告」
4. American Friends of Tel Aviv University. “Eating a big breakfast fights obesity and disease.” ScienceDaily. ScienceDaily, 5 August 2013.
www.sciencedaily.com/releases/2013/08/130805131011.htm
<その他の参考となる情報>
・ 名古屋大学「”お腹ポッコリ”の原因は朝食欠食+不活動にあり 生活習慣と食べ方の改善がメタボ予防につながる!」(2025年3月4日)
・ 一般社団法人日本肥満症予防協会「朝食をしっかりとって肥満・メタボに対策 バランスの良い朝食で内臓脂肪型肥満を改善」(2025年3月31日)
・ 朝日新聞「中年男性に多い「おなかぽっこり」 「朝食なしと不活動」が原因か」(2025年6月4日)
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