ジェロントロジーに関する耳寄りな情報 第121回(ジェロ・マガ Vol.121[2025年12月23日]より一部抜粋)
このコーナーでは、ジェロントロジーに関連する、日々の生活や今後の生き方に役に立つ、あるいは「耳寄りな」情報をお届けいたします。
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今回は「名前」について少し話をしたいと思います。
■ 「名前」がもたらす心理的効果
突然ですが、皆様はご自身の名前についてどの程度愛着をお持ちでしょうか。私は学生の時に長野県松本市に住んでいたため、居住地と名前が同じということで、初対面の方からも覚えられやすく、名前にちなんだ会話をする機会が多くありました。さて、この「名前」についてですが、海外では興味深い研究報告が複数されています。一例をあげると、
「歯医者(dentist)にはDのイニシャルの持つ人が多い」
「自分のイニシャルが入ったブランド名を好みやすい」
というポジティブなものから、
「Kで始まるメジャーリーグ選手は、他の選手に比べて三振する割合が高い」
(Kは三振を表す)
というネガティブなものまで幅広く報告されております。
このように、自分の名前に含まれる文字(イニシャル)に対して無意識に好意を抱き、その文字を含む物や事柄(ブランド名、地名など)を好ましく評価をする心理傾向を「ネームレター効果」と呼びます。日本の場合は「呼び方(音)」に加え「漢字」の表記にも違いがありますが、「呼び方(音)」と「漢字」両方が揃った場合に、ネームレター効果が発揮されるというような報告もされています。※1
※1 Taku Togawa , Yuriko Isoda , Ryo Suzuki , Naoto Onzo,(2023).
Effect of Customers’ Names on Brand Choices: The Role of Letters as Visual Information Japan Marketing Journal Vol. 42,No. 3,27-38.
一方で、「ネームコーリング効果」というものもあります。こちらは、相手から名前を呼ばれることにより、呼んだ相手へ好感度や信頼感が高まる心理効果を指します。ここで、私の話に戻りますが、もしかしたら無意識のうちに「ネームレター効果」により進学先を決め、「ネームコーリング効果」により思い出が美化され、
結果として、自身の名前への愛着が強くなっているのかも…とも思いました。
■「同姓同名」の活動
皆様は自分と同姓同名の人物に会ったことはありますか。私は同姓同名の人物に会ったことは一度もありませんが、テレビに出演しているアナウンサーやサッカー選手に同姓同名の方がいたため、これまた周囲の方に名前を覚えていただく大きな機会となりました。同姓同名の人に一度会うだけでも非常に珍しい機会であると思いますが、同姓同名の方を集めて活動している方がいるようです。
それが「タナカヒロカズ」※2さんです。
※2 タナカヒロカズ運動
発起人の田中宏和さんが、1994年にプロ野球のドラフト会議で一位指名の選手が同姓同名であることに衝撃を受けたところから活動が始まります。当初は「田中宏和」という方のみを対象に活動しておりましたが、2022年からはグローバルな運動へとリニューアルし、「タナカヒロカズ」という方を対象に広げ、活動をされています。この活動では、旅行、テーマソング作り、書籍出版等の様々な内容を行っています。活動の目的としては、日本からはじまった同姓同名コミュニティの運動が、ちょっとした共通点で人がつながり助け合う親睦活動として世界に広がり、さらに世界の同姓同名コミュニティと連帯し、国際交流を進める平和活動へと発展することを夢見ているとのことです。この活動が実を結び、「同姓同名の最大の集まり」という事柄で、2022年に「タナカヒロカズ」さん178人が集まりギネス記録を樹立しました。しかし、そのわずか98日後に、セルビアの「ミリツァ・ヨヴァノビッチ」さん256人が集まり、その記録を破られてしまいました。※3
現在は、2度目のギネス記録に挑戦するために、仲間を募集中とのことです。
※3 PR TIMES プレスリリース
現在ギネス記録保持者の一人である「ミリツァ・ヨヴァノビッチ」さんは、「普段ありふれた名前と思われていたけど、今日からとても特別な名前になった」と取材に対して喜びを語ったそうです。昨今は、コロナ禍の影響もあり、人と人とのつながりの希薄化が懸念されています。そんなご時世に「名前」という小さな共通点により新たなつながりが増え、それが一人一人の喜びにも繋がるということは、とても興味深いことです。もしかしたら、私たちも気づいていないだけで、すでに身近に世界一になれる要素を持っているかもしれません。
