ジェロントロジーに関する耳寄りな情報 第38回(ジェロ・マガ Vol.38 [2022年8月30日より一部抜粋)

このコーナーでは、ジェロントロジーに関連する、日々の生活や今後の生き方に役に立つ、あるいは「耳寄りな」情報をお届けいたします。

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唐突ですが、皆さまは「自分史」を書かれたことはありますか?
今回は、今までの情報提供とは少し雰囲気が変わりますが、私と祖父の間で最近起きた出来事をきっかけに、「自分史」をテーマに取り上げてみたいと思います。

私はこの夏、東北に観光に行ったのですが、ちょうど今回の観光先の近くに、先祖の墓があると聞いたことがあるのをふと思い出しました。急遽祖父に連絡を取って場所を確認し、お墓参りに行ってきました。

すると、祖父は私のお墓参りを嬉しく思ったのか、祖父がこれまでに自分で調べたルーツを書いた紙と、祖父の両親(私の曾祖父母)の話や、祖父の幼少期の話をしたためた「自分史」を、私に送ってきました。
先の大戦の頃、祖父や曾祖父母が当時どこで何をしていたのか、どのような気持ちで過ごしていたのか、これまで知らなかったことを初めて知ることができ、とても貴重な資料だと感じています。

祖父は市の生涯学習講座をきっかけに「自分史」を書き始めたそうです。
かつての生涯発達心理学では、画一的なライフサイクルの発想がありました。しかし、今日においては人々のライフスタイルが多様化し、年齢でステージを区切る理論は当てはまらなくなってきたことから、むしろ個人のライフコースが注目されています。
中でも「自分史」研究は、回想法の手法によって、過去に起きた出来事がどのように自分に影響を与え、自分自身がどのように変化してきたかを見つめ、これからの生き方を探る営みであるといわれます。
(回想法については以前のジェロ・マガvol.10でも取り上げられており、ジェロントロジー推進機構ホームページからもご覧になれます。)

また、人間は「意味付け」の主体であることから、生涯発達とは、生涯にわたる意味の生成過程として捉えられ、人生の出来事とその解釈は、語り直すことによって更新され、新たな自己を構築することが可能になるともいわれます。

ご自身にとっても、周りの人にとっても、貴重なものになり得る「自分史」。
既に取組まれている方は製本してみたり、これからの方は書き始めてみたり、今回の話がみなさまにとって何かのきっかけになれば幸いです。

ちなみに、愛知県春日井市では、自分史活動を支援していくために全国の自治体で初めての「自分史」に関する施設「日本自分史センター」を設置し、全国から「自分史」の寄贈を受け付けているようです。
もし、皆さまが「自分史」を書いて誰かに読んでもらいたいと思われたら、このような施設を活用されてみてはいかがでしょうか。