ジェロントロジーに関する耳寄りな情報 第40回(ジェロ・マガ Vol.40 [2022年9月27日より一部抜粋) このコーナーでは、ジェロントロジーに関連する、日々の生活や今後の生き方に役に立つ、あるいは「耳寄りな」情報をお届けいたします。 —-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—- Vol.22でご説明した総務省「社会生活基本調査」ですが、最新(2021年)の調査結果の一部が8/31に公表されました。 ○総務省統計局「令和3年社会生活基本調査」 そこで今回は、最新の調査結果を基に、高齢者(65歳以上)の時間の使い方の変化について、簡単な分析を行ってみたいと思います。 はじめに、高齢者(65歳以上)の行動別総平均時間が、この5年間(2016→2021)でどのように変化したのかをみてみます。 1日の中で費やす時間のうち、総平均時間が増加したのは、「睡眠」、「家事」、「テレビ・ラジオ・新聞・雑誌」、「休養・くつろぎ」となっています。 一方、「身の回りの用事」、「食事」、「育児」、「移動(通勤・通学を除く)」、「趣味・娯楽」、「ボランティア活動・社会参加活動」、「交際・付き合い」「受診・療養」、「その他」に費やす時間は、短くなっています。 なお、「通勤・通学」、「仕事」、「学業」、「介護・看護」、「買い物」、「学習・自己啓発・訓練(学業以外)」、「スポーツ」の総平均時間は、横ばいとなっています。 さて、今回の「令和3年社会生活基本調査」は2021年10月に実施されました。 そのため、コロナ禍の影響を強く受けていることが予想されます。 そこで、高齢者のどのような行動がコロナ禍の影響を強く受けたのか、簡易的ではありますが、定量的に確認してみたいと思います。 はじめに、時系列変化の傾向性(トレンド)を確認してみます。 例えば、「睡眠」の総平均時間は、1976年から2016年にかけて一貫して短くなっており、減少トレンドがかなり明確に出ています。 一方、「食事」の総平均時間は、概ね増加基調にあるものの、調査年によって上下しており、トレンドはそれ程明確ではありません。 このように行動によってトレンドの明確性に差があります。 トレンドが明確な行動は以下のとおりです。 ●総平均時間の増加トレンドが明確な行動 →「身の回りの用事」「家事」「買い物」「移動(通勤・通学を除く)」「テレビ・ラジオ・新聞・雑誌」「学習・自己啓発・訓練(学業以外)」「スポーツ」 ●総平均時間の減少トレンドが明確な行動 →「睡眠」「仕事」「交際・付き合い」「受診・療養」 ここで、トレンドが明確な行動に関しては、トレンドを2021年まで延長することで試算した予測値について、一定程度の妥当性を有していると判断します。 そして、2021年の実績値と予測値の乖離をみることによって、コロナ禍の影響を把握してみたいと思います。 分析結果は以下のとおりです。 ●実績値と予測値の乖離が大きい行動(≒コロナ禍影響大) ・予測値上限を上回った行動 →「睡眠」 ・予測値下限を下回った行動 →「身の回りの用事」「買い物」「移動(通勤・通学を除く)」「交際・付き合い」 高齢者がこれらの行動に費やした時間は、 コロナ禍の影響を受け変化したことが推察されます。 ●実績値と予測値の乖離が小さい行動(≒コロナ禍影響小) →「仕事」「家事」「テレビ・ラジオ・新聞・雑誌」「学習・自己啓発・訓練(学業以外)」「スポーツ」「受診・療養」 高齢者がこれらの行動に費やした時間について、コロナ禍の影響は限定的であったと考えられます。 今回の分析はごく簡易的なものですが、これから統計データが揃うことで、コロナ禍が社会に及ぼしたインパクトの正確な評価が進むと思われます。 個人的には、テレワークの普及など、良い意味での「レガシー」が残っていくことを願っております。