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ジェロントロジーに関する耳寄りな情報 第106回(ジェロ・マガ Vol.106[2025年5月27日]より一部抜粋)

このコーナーでは、ジェロントロジーに関連する、日々の生活や今後の生き方に役に立つ、あるいは「耳寄りな」情報をお届けいたします。

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前回のジェロ・マガ(Vol.105)では「墓じまい」についてお届けしましたが、今回はお墓や終活の視点を観光の側面から捉えた「墓地観光」と「理想の終の棲家さがし」についてご紹介します。

1.   故人を偲ぶ場から、憩いと学びの空間へ:国内外の墓地観光

お墓と聞くと、厳粛で静かな場所というイメージが強いかもしれません。しかし近年、歴史的な墓地が観光地として注目を集め、多くの人々が訪れる憩いや学びの場へと変わりつつあります。東京の谷中霊園はその代表例です。徳川慶喜や渋沢栄一といった著名人が眠るだけでなく、桜の名所としても知られ、春には多くの花見客で賑わい、歴史散策や自然を楽しむ人々にとって魅力的なスポットとなっています。

海外に目を向けると、フランス・パリのペール・ラシェーズ墓地は、ショパンやオスカー・ワイルドなど数多くの著名人が眠り、その美しい彫刻や緑豊かな環境から「世界で最も美しい墓地」の1つと称され、年間300万人以上が訪れるといわれています。アルゼンチンのレコレータ墓地も、エバ・ペロンの墓をはじめ、華麗な墓廟建築が立ち並び、屋外美術館のような趣です。また、アメリカのハリウッド・フォーエバー墓地では、往年のスターが眠る隣で野外映画上映やコンサートが開催されるなど、ユニークな取り組みが人気を集めています。

これらの観光地化された墓地は、故人を偲ぶだけでなく、歴史や文化、芸術、自然に触れることができる新たな価値を提供しています。墓地は怖いイメージもありますが、意外にも観光地化されている事例が国内外にあり、私も先日、谷中霊園周辺を散策しましたが外国人も多く訪れていました。

 2.   理想の終の棲家を探す旅:「終活リゾート」体験&見学ツアー

 さて、終活の一環としてご自身やご家族の「終の棲家」を考える際も、選択肢は驚くほど豊かになっています。最近では、候補地を巡る「下見観光ツアー」も登場し、旅行のように楽しみながら理想の場所を探すことができるようになってきました。

例えば、四季折々の自然に抱かれる樹木葬霊園の見学ツアーでは、実際の雰囲気や管理体制を確認できます。東京都台東区にある長明寺境内の「谷中樹陵 久遠」は、都市部にありながら緑豊かな樹木葬庭園として注目されています 。ツアーでは、大きなシンボルツリーの下で眠る区画や個別のプレートが置かれる区画など、多様なスタイルを見学でき、生前契約の人気の高さも伺えます。

ハウスボートクラブが企画する「終活バスツアー」では、東京湾での海洋散骨の模擬体験がプログラムに組み込まれており、クルーザーに乗って実際の雰囲気を感じることができます。このような体験は、海洋散骨が単なる遺骨の処理ではなく、故人を見送る厳粛かつ感動的なセレモニーであることを実感させてくれます。

海の見える納骨堂もまた、新たな選択肢として注目されています。ハワイのカネオヘ湾を一望できる納骨堂の事例では、「海と空との一体感が、故人と永遠につながる感覚をもたらしてくれる」とその魅力が語られており、これは日本国内の同様の施設にも通じる感覚でしょう。広々とした海の景色は、訪れる人々に心の解放感と安らぎを与え、故人との精神的なつながりをより深く感じさせてくれるのかもしれません。

上記で紹介したような「下見観光ツアー」は、単に遺骨の行き場所を選ぶという作業を超え、ご自身の人生の最終章をより豊かに、主体的にデザインするための活動といえます。残りの人生を心身ともに健やかに過ごせる環境、同じ価値観や趣味を共有できるコミュニティ、そして家族や友人が訪れやすい場所といった「ウェルビーイング(より良く生きる)」の観点から理想のエンディングを選択することは、QOL(生活の質)を高める上で非常に重要です。

観光というアプローチを通じて、ご自身のエンディングについて考え、準備することは暗い話題ではなく、むしろこれからの人生をより充実させるための前向きなステップとなるのではないでしょうか。

<参考>
1.「田村淳の大人の小学校」終活バスツアーin東京(えんのたび・イベントレポート)
2.俳優・小西博之さんと海洋散骨・樹木葬・納骨堂を一日で巡る「終活バスツアーin東京」(株式会社ハウスボートクラブ・プレスリリース)
3.【徹底解剖】海洋散骨!海洋散骨体験クルーズに行ってきました! (セゾンのくらし大研究)
4.ハワイのお墓購入「バレー・オブ・ザ・テンプルズ 」(アロハストリート)